イグネ 〜屋敷林が育む田園の四季〜
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【番組概要】

 東北屈指の穀倉地帯仙台平野。どこまでも続く水田に、島のように浮かぶ緑の木立群がある。家屋を包み込むこの木立を人々は親しみを込め「イグネ」と呼び、長く守り育ててきた。イグネとは"居(住まい)を守る久根(生け垣)"、つまり屋敷林のこと。奥羽山脈から吹き下ろす強い風から家屋を守るために人々が一本一本植えたものだと言われる。
 戸数23戸が暮らす仙台市若林区長喜城地区。400年近く守り継がれてきたイグネは田園に迫り来る百万都市をくい止める緑の防波堤のようである。長喜城の人々は先祖が残してくれたイグネの木々を使い家を立て、イグネに植わる栗、柿、クルミなどの実を食し、木の葉を燃料とする、昔ながらの暮らしを営んでいる。そして、イグネを守り継いできた先人を敬いながら、子孫の繁栄を願いイグネに新たな木を植え継ぐ。
 番組は、大都市に佇む長喜城地区のイグネの四季と、そこに暮らす人々の営みを1年に渡り記録した。

【長喜城について】
 宮城県仙台市若林区長喜城
 江戸時代、伊達政宗の新田開発政策の中心として栄え、「長(とこしえ)に喜び満つる城」を築くことを願いその名がついたとされる。現在戸数23戸、107人が暮らし(平成14年3月現在)、17戸が農家(兼業も含む)を営む。田の水源は広瀬川。
 昭和40年代に入り、高度経済成長と共に労働力が都市へ流出。年寄りや会社勤めの兼業農家でも農業が続けられるよう、昭和47年「長喜城共同育苗施設利用組合」が設立された。大泉謙一さんはその5代目の組合長。@共同で苗を育て、A機械貧乏に陥らないよう田植機などの機械も共同で購入しB長喜城の30町歩の田すべてを農家全員で分担して田植えをする「助け合う農業」を確立。高齢者や会社勤めなど労働力の出せない家はお金を支払えば仲間たちが農作業を代行してくれる。モデル集落農業として、これまで「朝日農業賞」「日本農業賞」を受けるなど全国的に高い評価を得ている。

【お宿について】

 春、秋の祭り、1月に行われる男たちだけの集まり「お伊勢講」など、神社に関わる年間の行事の仕切役を「お宿」と呼ぶ。長喜城には、村の繁栄と田の豊穣を願い、村の代表が三重の伊勢神宮を参拝する風習が江戸時代から現在まで続いている。かつては命がけだった伊勢参り。その代表をくじで決め、激励する酒宴がお伊勢講だとされる。お宿は、お伊勢講の際、仕切役の家の床の間に祭壇を設け、神様がその祭壇に宿るとされることから、その名がついたとも言われる。お宿は各家が持ち回りで務めるため、戸数が20前後で推移している長喜城では、20年に1度回ってくることとなる。